Small Moon のおはなし会ラボ

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山口県立図書館の読書セミナーに参加しました(2021.3.13)

小学校からご案内をいただき、山口県立図書館で開催された読書セミナーに参加しました。
講師は岩国市在住の岩瀬成子先生で「子どもの本を書くということ」というテーマでした。
先生の子ども時代から、児童文学を書くきっかけになったことなど、いろいろと興味深いお話が聞けました。
先生は「ほびっと」という喫茶店で、児童文学作家の今江祥智さんと知り合い、先生の娘さんと過ごしたこともあるそうです。
自分はあまり児童文学というジャンルで本を読んだことがなかったので、先生の作品も今江さんの作品も知らなかったのですが、読んでみたいなあと思いました。
今回の講演のなかで、特に心に残ったものを紹介したいと思います。

本にジャンル分けは必要か?

図書館や書店では児童文学と小説に明確なジャンル分けがあります。
本のどこかにISBNコードというのがあるんですが、これは本に固有の番号です。
その次にCコードがあって、一桁目は販売対象を表わしています。これは出版社が付けることができるんですが、0なら一般向け、などと定義されています。
児童向けは8の番号が割り当てられているので、書店なんかではこれを見て置く棚を決めるわけです。つまり、一般向けの小説と児童文学は同じ棚に並ぶ可能性は限りなく少なくなります。
ところが先生は「児童文学」と「小説」って、ジャンルを分ける必要があるんだろうか?と提起されます。たとえば綿谷りささんの「蹴りたい背中」なんかは思春期のいろいろな思いが描かれていて、中学生が読んでもいいんじゃないかということでした。
先生は本の背表紙を見るのが好きで、児童文学を見ながら小説の棚に移動できるような仕組みができたら、子どもの本の世界が広がるんじゃないかというお話でした。
私たちは学校図書室の整備をしていますが、今回のお話を聞いて、地域の人にも学校図書室を解放して、児童と大人が一緒に選書をしていくと、子どもも読む内容が広がっていいのではないかと思いました。

図書室登校があってもいい

現在、いろいろな事情で教室へ入れない子どもがいると聞きます。
そういう子のなかで保健室へ行く子もいますが、先生は「図書室登校もあっていいんじゃないか」と言われました。
自分が本に救われたように、教室に入れなくても図書室の本に救われる子が必ずいるはずだ、と。
ところが、現在は図書室はいつも開いている状態にはないので、いつも開いている状態にしてほしいということでした。
図書ボランティアとして学校図書室に関わっている立場からすると、いまは司書の専門教諭がいるわけではないので、常に解放というのは難しいのだろうなあと思います。
また、何らかの問題を抱えている子に対応するのにはある程度のスキルが必要だろうし、単なるボランティアがその役割を果たせるのだろうか?という疑問もあります。
けれど、本の力でその子が救われるなら、ボランティアという立場から図書室解放を試みてもいいのではないかという気もしています。

読み聞かせで動き回る子は……

先生も読み聞かせをしたことがあるそうですが、じっと聞いている子もいれば、歩き回る子もいるそうで。
これはボランティアでも共通しているんですが、今年度は担任の先生も教室にいたので、ほとんど歩き回る子はいませんでしたね。
歩き回る子を見ると、本音ではイラッとくるし、読むのに集中できなくなりますが、選書の方法や読み方の工夫が足りなかったのでは、と自分のやり方を振り返るきっかけにもなりました。
ところが、先生はそんな子を見て「ああ、この子のなかで、本の何かの言葉によって、じっとしていられないんだな」と思ったそうです。
この発想はなかったので、そんな見方もあるんだ、と新鮮な発見がありました。

本を嫌いな子にどんな本をすすめるか

最後の質疑応答で、図書館司書の方から「読書感想文を書かなければならないとき、本があまり好きではない子にどんな本をすすめたらいいでしょうか?」という質問がありました。
ちょっと困っておられましたが、短いお話やその子が興味のある本をすすめたらどうかという回答でした。また、本に限らず、マンガでもいいようにしたらいいのに、ということも言われていました。
学校で何がイヤかというと、イヤなことをやらなければいけないことで、「ほどほど」にすることもいいんではないか、つまり本が嫌いな子は無理矢理本を読まなければいいという答えには、安心する子どもたちもいるんではないかなあと思いました。
もう一つの質問は「学齢より幼い本を読む子に、もう少し上の本を読ませるにはどうしたらいいか」というもので、これも本嫌いな子にどうやったら本を読ませるかという質問に似ていますね。
先生の回答は「そのままでいい」。「字がいっぱいある本を読むのは疲れるのは理解できる。絵本でもいいですよ」ということでした。
どちらも、無理をさせず、子どもにあった読書体験をさせたほうが良いというのは、とても共感できました。